ル・コルビュジエの建築作品

ル・コルビュジエ(1887-1965)は、20世紀に世界中に深い影響を与えた最も優れた建築家のひとりとされている。彼は建築の国際化と都市計画に取り組んだ巨匠であり、彼が20世紀後半にもたらした影響は計り知れない。ユネスコはル・コルビュジエの功績を評価し、世界7か国に現存する17作品を世界遺産一覧表へ記載することを決定した。そのうちの2作品がスイスにある。レマン湖畔の小さな家(コルソー)と、イムーブル・クラルテ(ジュネーブ)だ。

Maison Clarté Genf
イムーブル・クラルテは、ル・コルビュジエの設計図に基づいて、1930年から1932年にかけてジュネーブに建てられた全50戸の快適な賃貸集合住宅である ©
概要

構成資産

7か国・3つの大陸に所在する17建築作品記載された17施設は、半世紀にわたってル・コルビュジエが成し遂げた近代建築運動への顕著な貢献を体現している。

所在国

アルゼンチン、ベルギー、ドイツ、フランス、インド、日本、スイス

世界遺産一覧表への記載年

2016 年

記載理由

世界遺産条約履行のための作業指針第137条により、ル・コルビュジエの建築作品は連続性のある国境を越える資産と認められたため。ル・コルビュジエの建築作品は、20世紀の近代建築と建築家という職業に起こった深い変化を具体的に表現している。 

特徴

ル・コルビュジエは近代建築の先駆者であり、新しい時代を切り開いた。その作品は、ル・コルビュジエがもたらした近代建築運動の発展の証と言えよう。

レマン湖畔の小さな家(ヴィラ・ル・ラク)は、ル・コルビュジエとピエール・ジャンヌレが1923年から1924年にかけて手掛けた住居である。ル・コルビュジエは、レマン湖北側のほとり、コルソーに両親のために建てた別荘のことを「小さな家」と呼んでいた。平屋のヴィラは南向きで、湖に面するように作られた。ル・コルビュジエは、長さ16メートル、幅わずか4メートルのこの家を「住むための機械」と名付けた。この「住むための機械」という言葉は、現代人のニーズと日常活動に応えられるよう、必要最小限の面積に壁を取り払って建てられた新しいタイプの住宅を指す言葉としても使われた。

イムーブル・クラルテは、ル・コルビュジエと従兄弟のピエール・ジャンヌレの設計図に基づいて、1930年から1932年にかけてジュネーブに建てられた全50戸を有す快適な賃貸集合住宅である。ここで用いられたスチールフレームは、当時まったく前例のない画期的な建築技術であった。内部にある階段室2部屋の周りにはさまざまなタイプのアパートが施された。また、ル・コルビュジエが初めて賃貸集合住宅にメゾネット型の住居を採用したのも、イムーブル・クラルテにおいてであった。本建物は近代住宅を先駆けるプロトタイプであり、1950年代には彼の提案した近代住宅が世界中で採用されるようになった。

世界遺産とその「スイスらしさ」

シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ、別名ル・コルビュジエは、1887年にスイスのラ・ショー=ド=フォンで生まれた。1917年になると、彼はパリに生活拠点を移して働くようになり、1920年に「ル・コルビュジエ」というペンネームを使い始めた。ル・コルビュジエは近代建築運動で最も重要で影響を与えた代表的な建築家である。彼の作品は、前衛建築に関して第一次世界大戦終戦時に世界規模で起こった、前代未聞の価値観の交流の証でもある。

ル・コルビュジエの建築作品は、彼が半世紀にわたって近代建築運動にもたらした顕著な貢献と、建築様式や設計方法、過去の技術や工事管理方法における革命的な変化を物語っている。彼の作品は、建築、絵画、そして彫刻が統合した芸術の集大成を表現していると言えよう。ル・コルビュジエによる近代建築運動への貢献とは、半世紀を通じて全世界に着実に広められていった建築および文字による提案の顕著な総体なのである。