アルプスを越えて行われる南北ヨーロッパの国際的な物資輸送や人の交通の大部分がスイスを通過することから、スイスは、ヨーロッパの交通にとって特別な場所に位置していると言える。
トランジット
スイスは、アルプス山脈に多くの鉄道、および自動車用トンネルを建設し、アルプス山脈によって遮断されていた人と物資の輸送を可能なものにした。2015年、3900万トンの物資が道路と鉄道によってアルプスを越えて輸送された。この量は、ゴッタルド自動車トンネルが開通した翌年の1981年の量の倍以上に値する。隣国のそれとは対照的に、スイスは、アルプスを経由する物資輸送には主に鉄道を利用している。スイスは、アルプスを通過するトラック交通を減らすことにより環境と山岳地方に暮らす人々の生活を守るため、貨物輸送を道路から鉄道に移行する政策を遂行している。
アルプス縦断鉄道(NEAT/NLFA)
増加する物資輸送に応対し、また、アルプスを経由する人の交通をより快適なものとするために、スイスは、世界最大規模の建設プロジェクトとなるアルプス越えの新しい鉄道建設(アルプス縦断鉄道NEAT/NLFA)を行っている。アルプス縦断鉄道の建設によりスイスは、ヨーロッパに効率性の高い物資、および人の輸送経路を提供する。ヨーロッパの鉄道網との統合と高スピード区間との接続により、スイスとヨーロッパの主要都市間の人の行き来も容易になる。
アルプス縦断鉄道の建設には、レッチベルク、ゴッタルド、チェネリを通る3つのアルプストンネル建設と乗り入れ区間との調整も含まれてれている。傾斜が少ない、いわゆる“平らな鉄道”にすることでスピードを上げ、重量のある貨物列車の導入が可能となり、代替え交通として、ヨーロッパの貨物輸送に貢献する。新レッチベルク路線は、2007年に開通し、ゴッタルド路線は、2019年から利用可能となる。2016年に開通したゴタルド基幹トンネルに続き、2019年にはチェネリ基幹トンネルの完成が予定されている。長さ57kmのゴッタルド基幹トンネルは、世界最長の鉄道トンネルである。